新宿歌舞伎町でみつけた非日常口毛刈り。

2006年06月23日

ワタシ的・人生の味


『涙とともに食べた人でなければ、人生の味は分からない』 ゲーテ

夕方にやっているフジテレビの再放送。
好きな俳優がでていたので時間があるときは観てました。
少し前に終わってしまったのですが、
物語の最後に映ったこの言葉に思わずニヤリ。

うまいことをいうじゃない。

そんなこんなで、「涙とともになんか食べたことあったっけな」
なんてちょっと自分史を振り返ってみた。

そしたらありました。

食事に、リアル涙をふりかけたお話です。
あれは確かにしょっぱかったな。笑



小学校3年生の時、私がいつも顔色をうかがっている男の子がいました。
すごくドキドキしていたのですが、残念ながらではありません。
ただ単純にその子が怖かったのです。

それは給食の前の体育の時間。
詳しい経緯は忘れてしまったけれど、
私は例によって彼にイジメられてました。
運の悪いことに、私は彼よりちょうど一人分だけ背が低かったので、
体育座りしていても、校庭を走っていても
とにかく後ろから蹴られたりつねられたりで、
私は必死に涙をこらえていました。

でも体育の時間が終わるにつれて、気分は暗くなるばかり。
というのも更に悪いことに、私は彼と席が隣同士だったのです。

給食の時も彼の目の前でご飯を食べなければならず、
たび重なる攻撃についに涙が…。(あぁ、ほろ苦い)

だから、もう食べたんです。泣きながらむしゃむしゃと。
しゃっくりあげるときに物が喉に詰まってうまく食べられず、
悲しさよりも、恥ずかしさでその場面をよく覚えています。

「お前、きたねーよ」って、お前そりゃねーよ、って感じです。

それはまるで携帯ムービーで録画したかのように、
今でも再生ボタンさえ押せば、ほんの数秒間だけ
鮮明な映像が頭に流れます。

覚えている限りで涙とともに食べたのは、
後にも先にもあの一回。
涙のスパイスがよくきいていて、本当にしょっぱい味がしました。


これはリアル人生の味だったわけだけど、
そりゃ生きていれば色々あるし、他にも
涙とともに飲み込んできたものはそれなりにある。

ぼやける視界を必死でこすりながらハンドルを握ったこともあるし、
枕の冷たさをほっぺに感じながら眠ったこともある。


「泣く」というのは究極的には個人的な行為だから、
高尚と呼んでいいんだか悪いんだかよくわからないこの味を
誰かと分かち合うことはできないし、
人生の味に立ち向かう時は、きっと人は一人だろう。

でも、とにかく一つ言えるのは、
どれほど涙を流したとしても、とまらない涙はないということだ。
物理的に時間が経てば涙は枯れるし、枯れない人は人ではない。

問題なのはその後だ。

涙が枯れたあと、その出来事はいつしか忘れてしまうかもしれない。
「人生の味-セチガライ編-」に保存されるかもしれない。
「人生の味-封印編-」に保存されるかもしれない。
あるいは消去したくてしきれず、傷そのものになってしまうかもしれない。

ただ、たとえそうだとしても、もし運がよければ時には
黙ってティッシュ箱でも置いてってくれる人がいるかもしれないし、
おいしいものでも奢ってくれる人が現れるかもしれない。

「人生の味フォルダ」にたまった画像を一緒にみて、
笑い飛ばしてくれる人がいるかもしれない。


「涙とともに食べた人でなければ、人生の味は分からない」と、ゲーテは言う。
それは確かにその通りだろう。

でも、本当の意味で、その味の意味を知るのは
なぜ今笑えるのか、そのワケを考えたときなんじゃないのだろうか、
なんてそんな風にふと思う。

人生の味は、もちろん顔がくしゃくしゃになるくらい
辛くて、しょっぱくて、すっぱくて、苦いんだけど、

それでも味わった後には、少しだけ「ふっ」と目が細くなる瞬間はきっとある。
そしてその時、ちらりと横を見てみれば、
もしかするとそこに同じ顔があるかもしれない。


at 06:36│Comments(2)

この記事へのコメント

1. Posted by ヤソ@元CNSコン   2006年06月23日 22:39
人生の味は、もちろん顔がくしゃくしゃになるくらい
辛くて、しょっぱくて、すっぱくて、苦いんだけど、
それでも味わった後には、少しだけ「ふっ」と目が細くなる瞬間はきっとある。
そしてその時、ちらりと横を見てみれば、
もしかするとそこに同じ顔があるかもしれない。
↑なんかいいね、この表現。
2. Posted by 桂   2006年06月26日 13:31
>ヤン@元CSNコンさん
おおおお、ヤンさん!
お久しぶりです。お元気ですか?
Blog読んでくださってとてもうれしいです。
書き込みしてくれてさらにうれしい{まる}
この文章、実は「日本VSブラジル」の試合をみながら書いたんです。
人生の世知辛さを感じつつ、なぜかこんな表現になりました。

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